マーテイン・ラージ著、林寧志訳 © 2019 Yasushi Hayashi
『三分節共栄社会―自由・平等・互恵・持続可能性を実現する―』8の1
銀行がこれほど簡単に金を創り出すことには嫌悪感を抱く。 J・K・ガルブレイス
政府は、政府機能や公共事業のために利子を払って資本金を借り入れるべきではない。政府は政府支出・消費者購買力に必要な通貨・信用を全て自ら創造し、発行し、流通させるべきである。
エイブラハム・リンカーン
土地・労働・資本の商品化は、市場の機能不全、社会的不公平、富の格差の拡大という結果を招きます。資本を市場で売買すると富が少数の人間に集中しますし、土地や住宅の市場の放任も同様の結果をもたらします。所得や富の格差が助長されるのです。この章のねらいは資本主義を変革するために、資本をコモンズ(共有財)として保護管理(スチュワード)することで共同利益を確保することと、個人が先導して起業するのを容易にするために新しい資本融資の方法を提示することです。起業家や新事業は資本を必要としますが、その一方で資本というコモンズから社会が利益を得ることも望まれます。つまり、生産性を向上させる起業家に資金を融資しながら、公共サービスの財源を確保することを可能にするのです。
この章では次の内容を取り扱います。
· 市場原理主義が世界を支配するとどうなるか
· 「商品としての資本」から「信託としての資本」へ―事業活動のために資本を循環させる
· 個人や企業による寄付
· 特許・著作権からの収入の寄付
· 富の制限:資本の著作権法
· 個人や国家の資本所有からコモンズ資本信託へ
· 資本を相互組織化する―協同組合・財団・パートナーシップを通じての公共利益
· 市中銀行によって創造される新資本を公共資本投資へ導く
· 国民投資年金基金を設立する
· 資本と環境のグローバル・コモンズ信託
· 自由企業から社会的企業へ